年収1000万円は勝ち組と言えるか?
藤野:それに対して、以前は勝ち組とされていた年収1000万円くらいのサラリーマンはどうかというと、不動産や株を持っていなければ、年収1000万円が3000万円になることはなかなかありませんよね。1000万円の人が頑張って、1100万円とか1200万円になるのがせいぜいだと思います。
つまり「超勝ち組」の勝ち方がべらぼうになる一方で、大したことがない勝ち組がいる。ものすごい「多極化」が起きています。
──資産を持つ人々からすれば、何もしていないのに勝手に資産が増えたという感覚でしょうね。
藤野:また、「負け組」と言われる人の中でも、徹底的に負けた、非常に生活が苦しい層が出てきています。
これらの人たちは、社会的に交わることがなく、お互いの姿が見えていないので、政治やメディアも多極化していきます。
生活が苦しい人たちばかり取り上げるメディアがある一方で、経済の動きだけを取り上げるメディアがある。でも、両者は交わらないので話が噛み合わない。
「こんなに世の中悪くなって、こんなに苦しい人がいて、自民党政治は最悪だ」と憤る人がいる一方、すごく上手くいっている人は「何を言っているんだ、いい時代じゃないか」となる。同じ日本にいても、違う風景が映っているのです。
その結果、政治的・社会的にどうなるかというと、中間層が完全に崩壊してしまいます。
──そうなると、合意形成が難しくなっていきますよね。
藤野:そうですね。多極化に合わせて、政党も多党化しています。