野球には興味がなかった
政治記者として頭角を現し、政界に強い影響力を持つようになった渡辺氏が、興味もなかったという野球について、協約などを読みあさって精通していく。2001年には、ヤクルトの株式を保有しているフジテレビと同じグループのニッポン放送が、横浜の筆頭株主となることをプロ野球の実行委員会が承認する。これに対し渡辺氏は、フジサンケイグループが横浜、ヤクルト両球団の経営に参加することは協約違反であると猛烈に異議を唱えた。
11年にもTBSホールディングスからDeNAへ球団譲渡された際、DeNA社が運営するソーシャルゲームサイト「Mobage(モバゲー)」が球団名として浮上していたことに「モバゲーは売名行為。野球協約の観点から許されない」と釘を刺した。
シーズン中も東京ドームの試合観戦へ頻繁に訪れ、球界の最高議決機関である12球団のオーナー会議にも欠かさずに出席した。そこでは、他球団のオーナーと野球を見る視線の違いは明白だった。
ドラフト廃止やFA権導入などの球界改革に持論を強く主張した背景には、巨人への“偏愛”があったのは間違いない。読売新聞、日本テレビホールディングスという巨大メディアを後ろ盾に持ち、自らに反対の意見が出ると「新リーグ結成」などをちらつかせる強引な手法は反発を招くことも少なくなかった。
傲慢に聞こえた発言も、ときに物議を醸した。