物議を醸した「たかが選手が」発言

 2003年に原氏が監督を辞任した際には、「読売グループ内の人事異動だ」と言い放った。04年の近鉄とオリックスの球団合併に端を発した球界再編問題では、渡辺氏が主張した10球団1リーグ制に反対する選手会と激しく対立。当時の古田敦也選手会長(ヤクルト)に向けた「たかが選手が」との発言が、日本中の野球ファンを敵に回した。

 渡辺氏は再編騒動の最中に、球団がドラフト候補の大学生選手に「栄養費」名目で現金を渡していたことが判明し、オーナー職を引責辞任した。選手会による史上初めてのストライキが行われると、ファンはこれを支持し、渡辺氏が主張する1リーグ制へと吹いていた風向きが一転、楽天の新規参入でリーグ再編が回避された。

 現在のプロ野球をみれば、2リーグ12球団を維持したことが「吉」と出ているだろう。かつて、一部のセ・リーグの球団は巨人戦の放映権におんぶに抱っこ状態で、パ・リーグの球団は親会社からの赤字補填に頼りきって怠慢経営を指摘されることも多かった。だが、それぞれが「独立採算」を目指して地元のファンを大事にする地域密着路線へと舵を切り、観客動員数を伸ばすことにつながった。

 皮肉にも、全国区でファンを抱えていた巨人は地上波による全国中継が激減した。