「巨人ブランド」に陰り
渡辺氏が「認めないなら新リーグを作ればいい」と圧力をかけて1993年に導入を進めたFA制度は、当初は各球団の主力やエースが人気球団の巨人へ移籍するケースが目立った。だが、近年はソフトバンクが豊富な資金力でマネーレースを制し、何よりも国内のトップ選手の目が巨人ブランドよりもメジャーへと向けられるようになった。
巨人もFA前にメジャー移籍を可能にするポスティングシステムを容認し、今オフはエースの菅野智之投手が海外FA権を行使して海を渡る。
メジャーへの強い対抗姿勢が打ち出せない日本球界の現状に、渡辺氏は何を思うだろうか。
田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。