高度経済成長を背景に都市部郊外で開発されたニュータウン。開発から50年近くが経ち、ニュータウンのオールドタウン化が深刻な課題になっているケースも珍しくないようだ。そんな中、デベロッパーによる異例の戦略でいまも持続可能な成長を続けているニュータウンがあるという。30年以上にわたり業界に身を置く不動産のプロが、その成長の謎を読み解く。
※本稿は『家が買えない』(牧野知弘著、ハヤカワ新書)より一部抜粋・再編集したものです。
(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー)
なぜ「ユーカリが丘」はオールドタウン化しないのか?
本書で解説しているように、1970年代に建設された都市部郊外のニュータウンの多くは、一代限りの街となり活力を失っていく状況に陥っているが、なかには奇跡的に今でも成長を遂げている街もある。千葉県佐倉市にある「ユーカリが丘」だ。
ユーカリが丘住宅地は1971年に、デベロッパーの山万(やままん)によって開発が始められた。山万という会社は、大阪の繊維問屋から1964年に東京に本社を移転したあと、住宅開発分譲業に進出したという変わり種のデベロッパーだ。
山万が1979年から分譲をスタートさせたユーカリが丘は、その開発手法のユニークさにより、今に続く成功につながっている。多くの自治体や民間宅地開発業者は、開発して分譲したら終わりの「売り切り」型のビジネスモデルとなっているのに対し、山万は「成長管理」型とでも言うべきビジネスモデルを構築したのだ。