あからさまな「金建希ファースト」で支持者も離反
このような尹大統領の態度は、かつての検察総長時代に、文在寅政権の不正を捜査し、政権に立ち向かって「正義を守った」検事の姿とはあまりにもかけ離れた姿だった。「公正と常識の回復」という旗印で大統領に当選した尹錫悦大統領が、国民ではなく夫人だけを守ろうとする姿に国民は失望し、支持率は10%台まで急落したのだ。
こうした「金建希ファースト」の尹大統領の態度は、与党との関係にも変化をもたらした。金夫人と韓東勲(ハン・ドンフン)国民の力代表との権力争いが生じたことをきっかけに、尹大統領は国民の力とも疎遠になってしまったのだ。
今年4月の総選挙の過程で、選挙対策委員長を任された韓東勲代表だが、彼の側近が金夫人をフランス革命の導火線となったマリー・アントワネット王妃にたとえたところ、これに尹大統領が激怒、韓代表に対し選挙対策委員長を辞任するよう要求した。
さらに、金夫人ラインの一員とされる元大統領室行政官がネットメディアの記者に対して「韓東勲代表を攻撃すれば金建希夫人が喜ぶだろう」と韓代表への攻撃をそそのかしている通話内容が暴露されると、韓代表は大統領室の金夫人ラインを排除することを尹大統領に公開要求するに至る。これに対して大統領室は「韓東勲ラインこそ国民の力党を牛耳っている」と反論し、尹錫悦大統領と韓代表の関係は「同志から敵」へ急変したのだった。