真の権力者
最も大きな非難を受けたのは、尹大統領就任直後、大統領夫妻の写真が大統領室ではなく、金夫人のファンクラブを通じてメディアに公開されたことだろう。一般人は出入りが禁止された一級保安区域である大統領執務室で撮影された大統領夫妻の写真も、金夫人のファンクラブから公開され、大統領警護上の問題まで提起される大騒ぎとなった。
大統領室経由で公開された大統領夫妻の写真も、尹大統領より金夫人にフォーカスを合わせた写真が多かったことから、野党と一部メディアから批判を受けた。思えばこの時から「大統領室の実力者は尹大統領ではなく金建希夫人」という妙なうわさが出回りはじめた。
金夫人には、ドイツモーターズの株価操作で野党から特別検事(特検)の圧迫を受ける中でも、いろんな疑惑が次々と浮上した。新設予定のソウル―楊平高速道路の終点が金夫人一家の土地がある所に変更されたという疑惑、亡くなった父親の知人だと主張する左派牧師から高級ブランドバッグをプレゼントされた疑惑、尹大統領の候補時代に助けてくれた政治ブローカーのミョン・テギュン氏に、その代価としてミョン氏の側近が選挙で公認を受けられるように圧力をかけたという疑惑など、衝撃的な疑惑が次々と浮上した。
しかし、尹大統領は野党が国会で発議した金建希特検法を「政治攻勢だ」として繰り返し拒否し、愛妻を守った。総選挙を控えた新年記者会見でも金夫人がディオールバッグを受けた事件に関し、国民に謝罪するよりは弁解に汲々とするなど、問題の深刻性を主張する国民世論と相当な乖離を示した。