移民排斥の“旗手”、ワイデル氏の存在感高まる
当然、ドイツ国内で高まるシリア難民・移民排斥の声に危機感を訴え、異議を唱える政治家もいる。オラフ・ショルツ独首相は13日、ドイツで働き社会に溶け込んでいるシリアの人たちは明らかに歓迎されているとし、早々に移民排斥論を唱える右派をけん制した。
しかし11月に連立政権が崩壊し、首相信任案の否決を受けて来年2月に総選挙を実施することになったドイツでは、移民排斥論は票集めに向けた格好の武器であることも事実だ。
近年、移民排除を声高に唱えてきた極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の躍進は目覚ましい。今月初めに行われた世論調査では、ショルツ現首相率いる与党社会民主党(SPD)を押しのけ支持率で2位につけている。(首位はキリスト教民主・社会同盟、CDU/CSU)。
AfDは今月7日、選挙に向け同党共同代表のアリス・ワイデル氏(45)を首相候補に擁立した。現状、ワイデル氏が首相となり得る可能性は、他党がAfDとの連立を拒否する見込みのため現実的ではないだろう。
しかし、ある政治家はロイター通信の取材に対し、ワイデル氏は典型的なAfDの支持層である中流階級のブルジョワ以外に、幅広く国民にアピールできる人物だとしている。
ワイデル氏は過去に、自身も党も反イスラムではないと発言しているものの、2018年の議会演説における「ブルカやスカーフを被った少女らや、政府から給付金を得ながらナイフを振り回す男たち、またその他の役立たずの者が我々の繁栄を保証するはずもない」という過激な発言をしたことでも知られる。
また同じ演説で、白人至上主義の極右がよく使う、欧州の白人社会が主にイスラム世界からの移民によって置き換えられるという陰謀論にも触れている。