ヤン氏は、起業家と裕福な投資家との取引を取り持つアンドルー王子のベンチャー「Pitch@Palace China」の創設メンバーで、3年間投資案件の2%を受け取るスキームを通じてアンドルー王子は金銭的な利益を得ていたとみられている。

「Pitch@Palace China」は英中黄金時代を促進するプラットフォームとして当時は歓迎された。英王室の錬金術の闇がまたも白日の下にさらされた。チャールズ国王がアンドルー王子をバッサリ切らない限り、英王室の信頼と人気回復は難しいだろう。

アンドルー王子とヤン・テンボ氏(Pitch@PalaceのYouTubeチャンネルより)
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冷水を浴びせられたスターマー首相

 在英中国大使館の報道官は「英国の一部の人々は中国に対しあらゆる『スパイ』話をでっち上げることに熱心だ。今回も泥棒が『泥棒を捕まえろ』と叫ぶ典型的な例。彼らの目的は中国を中傷し、中英間の正常な人的交流を妨害することだ。強く非難する」と反論した。

 キア・スターマー英首相(労働党)は11月、ブラジルのリオデジャネイロで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議で習主席と会談し、「協力する責任」の共有を確認したばかり。それだけに頭から冷水を浴びせられた格好。英中関係の改善は再び遠のいた。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。