ヤン氏は2020年、アンドルー王子の誕生日パーティーに招かれ、中国の潜在的な投資家とビジネスをする際、王子の代理人として振る舞うことを許されていた。翌21年11月、警察が外国による「敵対的活動」の疑いを調査する権限に基づき、入国するヤン氏を取り調べた。
「あなたはツリーのてっぺんに位置している」
警察はヤン氏のスマートフォンや電子機器を押収。その中からアンドルー王子の顧問であるドミニク・ハンプシャー氏からの手紙が見つかり、ヤン氏は「王子の最も近い親友以外であなたは多くの人がなりたがっているツリーのてっぺんに位置している」と告げられていた。
ハンプシャー氏は「あなたの指示で気づかれずに関係者をウィンザーにあるアンドルー王子の邸宅に出入りさせる方法を見つけた」「中国における潜在的なパートナーや投資家との話し合いでアンドルー王子の代理を務めることができる」と付け加えていた。
米富豪ジェフリー・エプスタイン被告=自殺=の性的虐待事件で未成年者との性交疑惑が浮上、英王室の公務を解かれたアンドルー王子と連絡を取る際のポイントとして「重要:期待を操れ。彼は絶望的な状況にあり、何にでもすがる」と記された文書も見つかった。
中央統戦部は虚偽や賄賂、脅しなど硬軟織り交ぜ相手国の政治家や有力者に接近し、緊密な関係を構築していく。22年1月、MI5がロンドン拠点の中国人弁護士クリスティン・リー氏が中央統戦部の意向を受け英下院議員に近づき影響力を行使していると異例の警告を発した。
英王室の錬金術の闇
リー氏は在ロンドンの事務弁護士で在英中国大使館の首席法律顧問、国務院華僑事務弁公室の法律顧問、中国海外友好協会、英議会超党派中国グループの幹事を務め、英国における中国人コミュニティーの顔役になった。超党派議員グループを通じて英国政界に影響力を行使していた。
アンドルー王子は以前、英国の通商特使を務めていたが、エプスタイン被告との交友疑惑で11年に辞任。現役王族からも外れ、数百万ドルにのぼる未成年者性交疑惑訴訟の和解金やウィンザーの大邸宅の維持費・警備費の出所が疑問視されている。