トランプ氏の目に留まった反中論文

 ところが、2024年の大統領選挙中はトランプ氏の内政外交を全面支持、特に対中政策では「中国共産党は米国の資本主義と民主主義を瓦解させるための戦争を仕掛けている」と、反中キャンペーンの先頭に立っていた。

Trump Taps Perdue for China, Signaling More Tension with Beijing 

 パデュ―氏は、2024年9月には保守系「ワシントン・エグザミナー」紙に3000ワードの論文を寄稿して、「米国の自由に対する中国の新たな戦争に勝つか負けるかは、我々が中国の脅威にどう立ち向かうかにかかっている」と最大限のレトリックを並べ立てていた。

China’s new war: America’s freedom depends on confronting the threat - Washington Examiner

Trump’s pick for China ambassador could be bad news for Beijing - POLITICO

 その具体的な手段は中国製品に対する関税引き上げと東アジアに配備されている米海軍力の強化だ、と論じている。

 この論文が、トランプ氏周辺のアジア専門家の目に留まったとされている。

 中国大使候補をめぐっては、パデュー氏のほかに、リチャード・ニクソン第37代大統領の孫、クリストファー・ニクソン・コックス氏(45)やジョージ・W・ブッシュ政権で財務長官を務めたハンク・ポールソン氏(78)といった中国共産党上層部と何らかの交友関係がある人物もリストに上がっていた。

 しかし、トランプ氏の鶴の一声で一蹴されたという。

 トランプ氏はすでに国務長官にマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)、国家安全補保障担当補佐官にマイケル・ウォルツ下院議員(フロリダ州選出)という対中強硬派を指名している。

 今回、パデュー氏を中国大使に指名したことでトランプ政権の対中政策を動かすチームには「反中国派」が勢ぞろいしたことになる。

 関税交渉を行う米国通商代表部(USTR)の代表には、ジェミソン・グリア氏(元USTR首席補佐官)、財務長官にはスコット・ベッセント(78、元ソロス・ファンド共同パートナー)と政財界の反中国派が指名されている。

 上海にテスラ製造工場を持つことから対中穏健派のイーロン・マスク連邦政府効率化担当長官(正式には閣僚ではない)は、どうやら孤立しそうな雲行きになってきた。