税収減への対応はどうなる?
自工会の改革案を事実上の叩き台として、税制調査会と関係各省庁による議論が始まっているところだが、様々な課題がある。
最も大きな課題は、抜本的な税制改革による税収の落ち込みをどのように埋め合わせるかだ。
財務省と総務省によれば、自動車関連税の歳入は、9兆59億円。このうち、車体課税は4兆7997億円で燃料課税が4兆2062億円とそれぞれが全体のほぼ半数を占める。
車体課税だけを見ると、取得時の自動車税(軽自動車税)の環境性能割が1712億円であるのに対して、消費税(車体課税分)が2兆1093億円と大きい。また、保有時では自動車税が1兆5049億円、軽自動車税が3078億円、そして自動車重量税が7065億円という分類となる。
また、国税と地方税として自動車関連諸税を見ると、車体課税については、自動車重量税が国税で、自動車税が都道府県税、また軽自動車税が市町村税にあたる。
燃料課税については、軽油取引税(9102億円)が都道府県税であるほか、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税は国税である。
仮に、自工会の改革案をそのまま採用すれば、特にクルマの保有時にかかる自動車税(軽自動車税)と自動車重量税を融合する新たな税の制度設計によっては、国税と地方税の歳入が減る可能性がある。
重量を税の指標とした上で「環境性能で増減税を講じる」という、いわば「階段のつけ方」が今後の議論の焦点になりそうだ。
クルマの所有者にとっては減税となり、経済効果が期待できるという見方もある。一方で、地方自治体には税収減による地域社会サービスの政策実施が難しくなる可能性を指摘する声もある。
そこに、「103万円の壁」の引き上げの影響による地方自治体の税収減が重なることになる。
全国の自治体は国に対して、「103万円の壁」引き上げに合わせて、地方への様々な補助事業の実施を要望しているところだ。ここに、自動車税、軽自動車税、そして軽油取引税に関わる減税分への対応が当然、含まれるものと考えられる。
税制調査会としては、国税については財務省、地方税については総務省と年末に向けて詰めの協議を進める。
もうひとつ、長期的な視点での「より広い受益者が公平に負担する持続的な課税」については、現時点ではあくまでも「将来に向けたイメージ」という段階という印象がある。各方面で関係者の声を聞く中でそう感じる。
その上で、こうした議論で重要なのは、乗用車、商用車、そして公共交通機関など、様々な移動体、いわゆるモビリティの社会における役割とその将来の絵姿を、地域住民がしっかりと理解することに尽きる。
地産地消型のエネルギーマネージメントや、データ通信を基盤とした新しい社会を構築するために、国全体として、そして地域それぞれが、誰が、何を、いつ、なぜ、どのように必要なのかを、国、地方自治体、民間企業、そして地域住民が持続的な議論を重ねることが必須だ。
そうした社会体系の変化の議論の方向性が見えてきた時に、クルマの所有者だけではない、より広い受益者が負担するモビリティ関連課税の議論を始めるべきだと考える。
桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
◎Wikipedia