ふるさと納税の上限額が変わるケースは?

 今回のD男さんのように、上限額が変わってしまう代表的なケースを確認しておきましょう。

●医療費控除を併用した場合

 医療費控除は、医療費を年間10万円を超えて(所得が200万円未満の場合は所得の5%)支払った場合に受けられる所得控除です。医療費控除をすると、課税対象となる所得額が減り、所得税や住民税を減らすことができます。しかし、課税対象となる所得額が減ることで、ふるさと納税の上限額が減ってしまいます。

 また、医療費控除は確定申告が必要な手続きなので、ワンストップ特例制度が使えなくなる点にも注意が必要です。

●iDeCoを併用した場合

 iDeCoは、老後の「自分年金」を作ることができる制度。自分で掛金を出して運用し、60歳以降にその運用した結果の資産を受け取ります。

 iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」の対象で、全額所得控除できます。しかし、医療費控除と同様、課税対象となる所得額が減ることでふるさと納税の控除額上限も減ってしまいます。

●投資で利益が出た場合

 投資で得られた利益は「譲渡所得」という所得です。給与所得だけでなく、たとえば株式を売って譲渡所得がある場合には、ふるさと納税の上限額も多くなります。反対に、損失があった場合には、所得が増えたり減ったりするわけではありませんので、ふるさと納税の上限額も変わりません。

 年末に駆け込みでふるさと納税をする方もいるかと思いますが、簡易版のシミュレーションでは、ふるさと納税の落とし穴にはまってしまう可能性大。詳細版シミュレーションでしっかり試算するようにしましょう。

高山 一恵(たかやま・かずえ) Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー
一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。最近の著作に『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』『はじめての新NISA&iDeCo