生前贈与の課税ルールが2024年から変わる(写真:beauty-box/Shutterstock.com)生前贈与の課税ルールが2024年から変わる(写真:beauty-box/Shutterstock.com

2024年から生前贈与についての課税ルールが大きく変わる。一部では「相続税対策の『暦年贈与』封じ」と話題を呼んだ今回のルール変更を前に、2023年中に“駆け込み贈与”を行う人も少なくないとか。2024年以降について、あるベテラン税理士は「子供を飛ばした孫への“スキップ贈与”が注目される」と言う。

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

暦年贈与や生命保険は、富裕層の節税策の王道

 取材先の税理士との雑談で、毎年元旦にクライアントの経営者一族の新年会に出席しているという話が出た。「新年早々大変ですね」と労うと、「いや、“業務”ですから」という答えが返ってきた。

 よくよく聞けば、新年会に出席した経営者の親族から贈与契約書にサインをもらって回るのが当日の重要な“業務”なのだという。その経営者は子供だけでなくその配偶者や孫、甥や姪など20人近い親族に、相続税対策の生前贈与として、贈与税がかからない基礎控除(年110万円)の枠内で毎年、暦年贈与を行っていたのだ。

 愛する家族に少しでも多く遺産を残すため、相続税の負担をできる限り軽くしておきたい——。こうした相続税対策に影響する制度改正が2024年から施行になる。

 2024年1月以降、生前贈与された財産を相続発生時に相続税に加算する「持ち戻し」の期間が3年から7年へと段階的に拡大される。

「持ち戻し」とは、被相続人(遺産を残す人)が亡くなったときまで相続人(法律上、遺産を受け取る権利を有する人)などに対して生前贈与していた財産について、一定期間をさかのぼった分を死亡時の相続財産として加算し、相続税を課す仕組みのことだ。今回の改正によって、この期間が死亡日以前3年間だったものが7年間に延長される。

 改正には、冒頭で紹介したような富裕層の相続税節税に歯止めをかける狙いがある。

 暦年贈与や生命保険は、富裕層の節税策の王道と言われる。この改正でどれくらい税負担が変わるのだろうか。

相続税の節税は富裕層の関心事項(写真:mapo_japan/Shutterstock.com)相続税の節税は富裕層の関心事項(写真:mapo_japan/Shutterstock.com