2.台湾海峡危機に米国が軍事介入する論拠

(1)米国は準同盟国・台湾を見捨てることはできない。

 米政府は、1979年締結した「台湾関係法」に基づき台湾の防衛を支援する道義的義務を負っている。

 事実、1996年3月の台湾海峡ミサイル危機の際に、米国は2個空母戦闘群(現 空母打撃群)台湾近海に派遣し、中国を牽制した。

 これは米台の事実上の「同盟関係」を証明することになった。

 米国が台湾を見捨てようとすれば、アジアだけでなく世界中の米国の同盟国は米国の誠意に対して深い疑念を抱くであろう。

 そうすれば、アジアにおける米国の地位だけでなく、欧州における地位にまで悪影響が及ぶことになる。

(2)第1列島線のほぼ真ん中に位置する台湾は米軍にとって極めて重要な戦略的要衝である。

 第1列島線とは、千島列島の北端から日本本土、日本列島南端の沖縄へと延び、さらに南下して台湾を通過し、ルソン海峡とフイリッピンを抜けてマレーシア領ボルネオへと続く線である。

 中国は約1万8000キロの海岸線を持ちながら、第1列島線上の米軍基地や自衛隊基地、台湾などによって、外洋への出口を塞がれている。

 宮古海峡やバシー海峡といった航路が戦略的に重視されるのはこのためである。

 平和的な方法にせよ、武力にせよ、中国が台湾を併合することになれば中国は第1列島線を分断することになる。

 そうすれば、中国は第1列島線、さらに第2列島線を突破し、近い将来には米軍の世界的な制海権に挑戦することになるであろう。

(3)台湾は民主主義の防波堤である。

 230年の歴史をもつ合衆国憲法のもと、世界の民主主義の先頭に立ってきた米国は、現在も自由と民主主義の盟主である。

 米国の中国に対する関与政策は失敗した。

 中国では民主化が起こらず、権威主義と国家主導資本主義の組み合わせにより経済発展した。そして今、世界では民主主義国家と権威主義国家の角逐が起こっている。

 今日、台湾は「共産主義の中国に民主主義が乗っ取られないよう防衛する最前線」(台湾の呉外交部長の発言)となっている。

 自由と民主主義の盟主である米国は、「民主主義の防波堤」を防護する責務がある。