(5)筆者コメント
1982年8月17日の「米中共同コミュニケ」の中で、中国は米国に対して「台湾問題の平和的解決のため努力する」ことを約束した。
これは極めて重要なことであるが、中国側は気にもかけていない。
なぜか。それは、「コミュニケ」であるからであろう。ここで、米中共同コミュニケの法的拘束力について付言する。
外交上作成される文書には、「国際約束である文書」と「国際約束ではない文書」に大別される。
「国際約束である文書」は、当事者間に国際法上の権利義務を設定するもので、「条約」、「協定」、「憲章」、「交換公文」、「合意された議事録」などの標題を含むものとされている。
一方、「国際約束ではない文書」とは、当事者間に国際法上の権利義務を設定しないもので、通常、「共同宣言」、「共同声明」、「共同発表」、「共同コミュニケ」、「共同新聞発表」等の標題が使用される。
従って、共同コミュニケは、当事者に対する拘束力は政治的・道徳的なものにとどまるものである。
(出典:内閣法制局長官を歴任した小松一郎氏の著書『実践国際法(第二版)』)
従って、中国は、コミュニケ作成の当事者には政治的・道徳的な責任があるが、今の我々(中国側)には何ら関係がないということなのであろう。
さて、「米華相互防衛条約」締結時の米議会の一般的な反応は、米国が台湾を守ることに異議はないが、金門島や馬祖群島を米国が防衛することによって、中国共産党との戦争、あえて第3次世界大戦に米国が巻き込まれるのには反対であったとされる。
既述したが、そのため同条約では、「台湾」という言葉は中華民国政府統治下の台湾島と澎湖諸島であると定義している。