「植民地主義の清算」を求める中国のロジック
ドイツとEU経済の心臓である自動車メーカーの巨人フォルクスワーゲン(VW)も危機に瀕する。販売台数で2016年から19年まで世界首位だったが、今年第3四半期の純利益が前年同期比で64%も減少。ドイツにある10工場のうち少なくとも3工場を閉鎖する話が持ち上がる。
製造業主導の輸出型成長という従来のモデルは世界経済がサービスやデジタルにシフトするにつれ、有効性を失いつつあるものの、製造業は雇用と労働者にとって十分な賃金を保証する。脱炭素経済への移行における中国の優越と支配は先進国の民主主義を破壊する恐れすらある。
次の選挙が迫るドイツ、フランスの首脳だけでなく、EUのウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長もCOP29を欠席した。COP29の最大の焦点は年間1兆ドルとも5兆ドルとも言われる気候資金ギャップを埋めることだが、EUが想定するのは年間2000億~3000億ドルだ。
途上国77カ国を率いる中国はさまざまなイベントに登壇し、意気軒昂だ。地球温暖化に責任を負う先進国は途上国のためにカネを出すのが当たり前という論理がまかり通る。そこには「植民地主義の清算」を求める中国のロジックが透けて見える。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。