中国がEVを輸出すれば先進国で失業者があふれる

 EVをはじめ、風力タービン(66%)、リチウム電池とソーラーパネル(それぞれ80%以上)と脱炭素経済における中国の市場シェアは極めて大きい。中国がEVや風力タービン、リチウム電池、ソーラーパネルを輸出すれば、それだけ先進国で失業者があふれる。

中国のスマートエネルギープロバイダーのCHINTがルーマニア南部のスラティオアラで運営するソーラー発電施設(写真:AP/アフロ)
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 昨年、リチウム価格は78%、コバルト価格は34%、ニッケル価格は42%下落した。需要を当て込んだEV・バッテリー原材料の供給過剰と、米中対立による販売伸び悩みで在庫が積み上がったのが原因だ。米国は中国製EVに100%、欧州連合(EU)はメーカーごとに17~35.3%の関税をかける。

 COP29では、14年ぶりの政権交代を果たし「2035年までに温室効果ガス排出量を1990年比で81%削減する」とぶち上げた英国のキア・スターマー首相を除いて先進国首脳の影は薄い。米欧にとって気候変動対策の旗を高く掲げることは有権者の反発を招きかねないからだ。

 気候変動対策を進めれば進めるほど先進国では「民主主義の赤字」が膨らむ。英国の自動車産業はEU離脱前に年間200万台の自動車生産を目指していたが、現在84万台弱。単一プラットフォームで100万台のレベルには到底及ばず、強烈な逆風に見舞われる。