SMRはまだ米国で商業的に導入されていない。ただ、それでも各社はSMRの展開に期待を寄せている。米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のCEO(最高経営責任者)であるマット・ガーマン氏は、「SMRのいくつかは、20年代には何の解決策にもならないだろう」としながらも、「SMRは30年代以降に優れたエネルギー源になる」と意気込みを示した。

 SMRの推進者は、SMRにおける小型設計、先進技術、建設プロセスの効率化が、従来の原子力プロジェクトの問題を回避できると考えている。工期の大幅短縮やコストの大幅削減が見込めるからだ。

マイクロソフト、スリーマイル島原発から電力供給

 一方、既存の原子炉を再利用したり、閉鎖された原子炉を復活させたりするといった動きもある。

 例えば、米マイクロソフトと米大手電力コンステレーション・エナジーは24年9月、東部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所で運転停止している1号機を再稼働させる契約を締結した。

 コンステレーションは約16億ドル(約2400億円)の費用を投じ、28年初頭までに原子炉を再稼働させる。マイクロソフトはコンステレーションと20年間の電力購入契約を締結しており、自社のデータセンター事業に電力を供給する。

30年までにカーボンネガティブ目指すマイクロソフト

 こうした動きはテック大手にとって「大きな賭けだ」とWSJは指摘する。マイクロソフトのCO₂排出量は、23年6月までの3年間で40%増加した。グーグルの排出量は23年12月までの4年間でほぼ50%増加した。マイクロソフトは、より多くのクリーンエネルギーを調達することで、30年までにカーボンネガティブ(CO₂排出量実質マイナス)を達成するという目標を掲げている。

 しかし、電力需要はAIの普及で増大の一途をたどっている。クリーンエネルギーの調達競争は今後ますます激化するとみられる。WSJによると、米東部バージニア州は世界最大のデータセンター市場の1つだが、ドミニオン・エナジーは同州の電力需要が39年までに倍増すると予想している。

 国際エネルギー機関(IEA)の調査報告によると、22年に460テラ(テラは1兆)ワット時だった世界のデータセンターの電力消費量は、26年には2.2倍の1000テラワット時になる見通しだ。