ロシアのクルスク州にウクライナ軍が侵攻してから、もう3か月目になる。クルスク州で何が起きているのか、そして国境の村から避難した人たちはどんな生活を送っているのか――。
現場のリアルな状況を知りたくてクルスク州に取材に出かけた。時系列で、実際に見聞きしたことのみをお伝えする。(後編/全2回、前編はこちらからお読みいただけます)
スジャから60キロ、原発の町クルチャトフ
クルスク原発のある町、クルチャトフに向かった。
人口は4万人。ウクライナ軍に占拠されている町、スジャからは60キロも離れていない。
原子力発電所という特殊事情のため、この町に入るには、特別な通行証を持って検問を通過する必要がある。
クルチャトフのシンボルは、原発とセットになっている大きな貯水池だ。夏には名物の小さなエビも獲れる。
地元の人々は「海」と呼んでいるので、私もそう呼ぶことにする。
まず目に入るのは、海岸のレクリエーション施設の充実ぶりだ。白鳥やコウノトリ、フクロウなど、たくさんの鳥がいて、子供連れでにぎわっている。
怪我をして飛べなくなった鳥や、巣から落ちた鳥などを集め、年金生活者の男性が愛情を込めて世話している。
私も案内してもらったが、彼の鳥に対する知識の深さに驚かされた。りんごや野菜など、鳥の餌が山のように積み上がっている。住民が寄付してくれるのだ。
クルチャトフ市長のイーゴリ・コルプンコフ氏は、もともと原発の技術職員だった。
地元を愛する叩き上げで、原発勤務時代に山積みだった市の問題を解消すべく、市議会議員からキャリアをスタート。
市議会議長を経て、12年前に市長に就任した。
コルプンコフ市長によると、現在稼働している原発はクルスク第1原発の3号機と4号機だが、クルスク第2原発の建設も順調に進んでおり、今年中も試運転が行われ、来年には発電を始めるという。
戦時下にもかかわらず、工事が予定通り進んでいることに驚いた。