ボランティア団体の女性

のんびりした様子の中にも緊張感

 ボランティア団体の倉庫に立ち寄った。カモフラージュネットが山のように積み上がり、文房具や薬、衣服などが仕分けされていた。

 女性たちが忙しく出入りしている。この団体は、クルスク市内の避難所やドンバス地域に必要な物資を送っている。

 侵攻後は、クルスク州全体がロシアの他の地域から「助けてもらう立場」なのかと思っていたが、そうではなかった。

 リーダー格の女性は「全く不安はないというと嘘になりますが、クルチャトフは私が生まれ育った場所。この町が大好きですから、離れるつもりはありません」と話した。

 クルスク市に戻る道を車窓から眺めていると、一軒家に「トマト」とか「リンゴ」と書いた紙が貼ってある。

 この辺りの土壌は農業に非常に適しているので、何でもよく育ち、しかも美味しいのだ。

 買って帰りたいなと思っていると、道なりに小さな墓地が目に入り、大きなロシア国旗がはためいていた。

 この豊かな町クルチャトフからも、志願兵となった人がおり、一部は無言で帰宅している。

 あのお墓は、きっと戦死した人のものだろうと思うと、真っ青な空も重苦しく感じられた。

 クルチャトフは、一見するとのんびりした町に見えるが、実のところ、かなりの数の監視カメラが設置され、厳しい警戒体制が敷かれている。

 私が帰ってから間もなく、ドローン攻撃により火災が発生した。

 平和に見える光景も、一歩間違えれば大きく変わってしまう危険性をはらんでいることを再認識させられた。