支援物資を運び込む赤十字のトラック

1日に2000人が支援を求めてやって来る

 クルスク市内に話を戻そう。

 州西部からクルスク市に避難してきた人々は、大学の寮やサマーキャンプ施設、ホテルなど、あらゆる施設に分かれて暮らしている。

 また、前編で紹介した修道院のように、州認定の正式な避難所ではないが、民間施設が避難所の役割を果たしているところもある。

 雑魚寝の避難所に入り、支援物資のマットレスを手に入れて、なんとか眠れる状態にしている人もいれば、もともと快適な設備があるところに入れている人もいる。

 このあたりの待遇の差は日本であればブーイングになりそうである。細かい条件を揃えるよりも、まずは走り出すところがロシアらしい。

クルスク市内にあるロシア赤十字のテント

 市内中心部にある公園では、黒くて重い袋を持った人が行き交っている。ロシア赤十字クルスク支部が配布している人道支援物資だ。

 公園内には、事務手続きをするテントや医療サービスのテント、衛生用品や食品などの支援物資を配布するテントが張られている。

 赤十字は、避難所や知人の家など、どこに滞在している人でも区別なく支援を行っている。

 何らかの手段で、避難指定地域から逃げてきたことさえ証明できればよい。多くの人はオンラインで来場予約をしてくるが、ネットが使えずに直接来る人もいるため、テントの近くにはいつも行列ができている。

 取材時点では、1日に2000人もの人が助けを求めに来ていた。

 黒い袋の中身は、米や小麦粉、食用油、お茶、肉や魚の缶詰といったスタンダードな食材だ。

 食材を節約できれば、ほかのものにお金を回すことができる。薬局で使える金券も受け取れる。

 赤十字とクルスクの薬局チェーン店の取り決めにより、赤十字に集まった寄付金が金券となり、個々の避難者が自分に必要な薬を買える仕組みだ。

 寄付金は日本円にして、150円ほど振り込む人もいれば、1人で何百万円も寄付する人まで様々だ。

 ロシア赤十字クルスク支部長のアレクセイ・ガポノフ氏によると、赤十字では経済的なサポート以外にも、越境攻撃に伴って連絡が取れなくなった親族を探す手助けを行っている。

 赤十字のネットワークや、行政、警察当局との情報交換により、ウクライナ軍の支配下にあるスジャ近郊を中心に、すでに1000人以上の行方不明者の所在を把握することができた。これは大きな成果だ。