第三セクター鉄道の登場で使いづらくなった18きっぷ

 長らく不動の人気を誇っていた18きっぷだったが、JRの赤字によって切り離される第三セクター(地方公共団体が民間企業と共同出資して設立された事業体)の鉄道が出てきたことで次第に使いづらくなっていく。

 例えば、NHK連続ドラマ小説「あまちゃん」の舞台にもなった三陸鉄道は、分割民営化を待たずに国鉄から切り離されて第三セクターの鉄道となったため、JR線ではないことを理由に18きっぷでは乗車できなくなった。

三陸鉄道の釜石駅を出発する記念列車(2024年4月)大漁旗がはためく中、三陸鉄道の釜石駅を出発する記念列車(2024年4月、岩手県釜石市/写真:共同通信社)

 一方で特例が設けられていた鉄道もある。前述した三陸鉄道は18きっぷを提示すると「三鉄1日とく割フリーパス」という企画乗車券を割引価格で購入できた。同じく国鉄から宮福線と宮津線を継承した第三セクターの北近畿タンゴ鉄道(現・京都丹後鉄道)も、青春18きっぷを提示することで1日乗車券を500円の追加料金で購入できた。

北近畿タンゴ鉄道北近畿タンゴ鉄道は、国鉄の旧宮津線と旧宮福線が第三セクターに移管して誕生した経緯があるため、青春18きっぷを提示すれば追加料金500円で一日フリーきっぷを購入できる特例があった(2008年8月、筆者撮影)

 数少ない18きっぷ利用者御用達の列車といえば、2009年に定期運行が終了し、2020年までは臨時運転されていた「ムーンライトながら」だろう。

 18きっぷの1回分は、日付が変わって最初に停車する駅までとしてカウントされる。そのため東京駅─大垣駅間を夜行の普通列車として走るムーンライトに乗車する際には、東京駅―小田原駅間までは通常きっぷを購入し、小田原駅から大垣駅までの移動で18きっぷを使って効率的に移動するのが鉄道ファンや旅行ファンの間では常識になっていた。

ムーンライトながらムーンライトながらは18きっぷで乗車できる夜行列車だったが、2009年に定期運行を終了。その後は臨時列車として運行されていたが、2020年に完全に姿を消した(2009年3月、筆者撮影)

 このように経済的にお得だった18きっぷだが、1997年には高崎駅―長野駅間に長野行新幹線(後の北陸新幹線)が開業。信越本線の一部区間は第三セクターのしなの鉄道へと移管され、JR線ではなくなったことで同区間の18きっぷでの乗車ができなくなった。

 同じように、東北新幹線が2002年に盛岡駅から八戸駅まで延伸開業を果たすと、同区間の東北本線が第三セクターのIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道へ、2004年には九州新幹線の新八代駅―鹿児島中央駅間が部分開業したことに伴って鹿児島本線の一部区間が肥薩おれんじ鉄道へ、といった具合に新幹線の延伸開業とともに18きっぷの使用できる範囲は狭まっていく。