文・写真=山﨑友也 取材協力=春燈社(小西眞由美)

奇岩怪石が続く深浦海岸は沿線のハイライト区間。景色が堪能できるよう、列車はゆっくりと進んでいく

乗り鉄におすすめのキハ48形「くまげら」編成

 日本には風光明媚な場所を走る路線が数多くあるが、今回ボクがオススメするのは秋田県の東能代と青森県の川部を結ぶ五能線。世界遺産白神山地の麓を進み、日本海の美しい景色を堪能しながら、津軽富士ともよばれる岩木山を望む、なんとも欲張りな路線である。その五能線を満喫するためにつくられた列車が「リゾートしらかみ」だ。

「リゾートしらかみ」は秋田から五能線を経由して青森までを約5時間もかけて結んでいる観光列車。乗車時間が長いにもかかわらず、冬でも2往復、春から秋にかけては3往復も走っていることからも、その人気ぶりが伺える。

 車両もHB-E300系の「橅」編成と「青池」編成、それにキハ48形の「くまげら」編成と3タイプある。HB-E300系は、ディーゼルエンジンとリチウムイオン蓄電池を組み合わせて走るハイブリッドシステムの車両で、乗り心地も快適だ。しかし国鉄時代からのディーゼルカーで車歴も長く、いつ廃止になってもおかしくない「くまげら」編成のほうに、乗り鉄としては乗っておきたいところである。

キハ48形の「くまげら」編成。国鉄時代の古い車両のため3編成の中で真っ先になくなる可能性が高い。乗車するならお早めに

 どの編成も車内の設備はほぼ共通で、両運転台の後ろにはフリーの展望席があり、2号車は半個室のような4人用のボックス席、そのほかは2列のリクライニングシートが並んでいる。どの列車にどの車両が使用されているのかはJR東日本のホームページに掲載されているので、事前に確認することができる。

ボックス席は座面を引き出してフルフラットにすることもできる。高齢者や子ども連れには嬉しい機能(「橅」編成は1・2・8・9番のみ)

 また「リゾートしらかみ」は特急ではなく快速列車。すべての座席が指定席なので乗車するには指定券が必要だが、今の時期発売している「青春18きっぷ」でも指定席券を購入すれば乗ることが可能なのだ。乗り鉄にはなんとも嬉しい限りである。

 そしてこの列車の指定席を取るうえで、どうしても抑えておきたいポイントがある。それは、絶対にA席を確保することだ。五能線を走る下り列車は常に進行左側に、逆に上り列車は常に進行右側に日本海を望んで走る。つまりいつも日本海に寄り添い、日本海にもっとも近い席がA席なのである(ボックス席の場合はA・D席)。C・D席では通路を挟むうえにA・B席に座っている人がいるため、わざわざ立ち上がらないと海の景色がよくみえない。つまりA席が確保できるかどうかでこの列車と五能線を存分に楽しめるかが決まるといっても過言ではない。