文・写真=山﨑友也 取材協力=春燈社(小西眞由美)

あざやかなラベンダー色にカラーリングされたディーゼル機関車がトロッコ車両を牽引。6・7月を担当し8・9月はグリーンがメインの色の機関車に交代する

トロッコ列車で初夏の北海道を堪能

 じめじめとしたうっとうしい梅雨の時期は、とかく出かけるのもおっくうになりがちだ。そんなときは梅雨前線から一気に離れ、北海道へと足を伸ばしてみてはいかがだろうか。しかもこの時期にピッタリの観光列車が道央を走っている。それが「富良野・美瑛ノロッコ号」だ。今年も6月8日から運行を開始しており、地域に夏の訪れを告げている。

 さて、地名を聞いてピンときた人も多いだろうが、富良野や美瑛周辺では6月の下旬から早咲きのラベンダーが咲き始め、7月中旬から下旬にかけてピークを迎える。丘一面を紫色に染め、爽やかな甘い香りを放ちながらゆらゆらと風と戯れるようすに人々は魅了され、心や体も癒される。そんなラベンダーを雄大な北の大地とともに鑑賞できるとあって、列車は国内外を問わず多くの観光客で連日賑わいをみせている。

「富良野・美瑛ノロッコ号」が誕生したのは1998年で、すでに四半世紀以上も走る北海道を代表する観光列車だ。車両は国鉄時代に造られた50系を改造した510系という客車で、窓を大きくガラスをなくしたトロッコ車両。座席は木目調で6人掛けのボックスシートと窓の方を向いた2名掛けのシートが並び、電球の照明や骨組みむき出しの天井とともに、レトロな雰囲気にあふれている。

 そもそもトロッコとは屋根のない貨車のことだが、50系は以前は普通列車に使用されていたため、車内は広く乗り心地も良いのがこの列車の特徴だ。

大自然の風が駆け巡る開放的な車内からの眺めは格別

 牽引する機関車はカラフルに化粧を施されたDE15形。ラベンダー畑と春小麦畑をイメージしたという塗装は沿線の風景によくマッチしている。