車窓からゆったりと絶景体験

 ところで愛称の「ノロッコ」とは「ノロノロと走る」と「トロッコ列車」を掛けあわせた造語である。文字通り速度を落としてゆっくりと走るため、通常の列車より約30分も時間がかかってしまうが、その代わりパッチワークのように広がる丘や荒々しい十勝岳連峰、広大な盆地にラベンダー畑といった北海道を代表するような景色を余すところなく堪能できる。そのなかでも見どころと呼ばれる美瑛の赤屋根の家や北星山ラベンダー園付近では、さらに減速するというサービスも。

 走行する区間は列車によって一部異なっているので注意が必要だ。1・6号は旭川~富良野間を走り、2~5号は美瑛~富良野間を結んでいる。今年の運転日は9月23日までの土日祝日を中心に、6月15日から8月12日までの毎日だ。

「富良野・美瑛ノロッコ号」が運転する期間中のみ臨時営業するラベンダー畑駅。ファーム富田の最寄り駅で、下車する人は結構多い

 列車に乗車するのであれば、やはり旭川から1号に乗車することをおすすめする。旭川の市街地を抜けて段々と自然が豊かになり、眼前に壁のようにそびえる山々を眺めていると、北海道を旅していることが実感でき高揚感もいっそう増すだろう。

 そして前述した景勝を満喫したら、ラベンダー畑駅で下車しよう。この駅は普段は時刻表に載っていないのだが、この時期のみ営業する臨時駅。そこから歩くこと約7分。ラベンダー畑で有名なファーム富田に入園したら、坂はきついが迷わずトラディショナルラベンダー畑を目指してみよう。

 畑の上段近くにたどり着いて後ろを振り返ってみると、足元から下に伸びる美しい紫色の絨毯の向こうに十勝岳を始めとする山々が壮大に連なっている。これを絶景と呼ばずして何と呼ぼう。しかもその中心には先ほど乗車したトロッコ列車の姿もみえるではないか。その素晴らしさから国鉄のカレンダーにも掲載されたことがきっかけで、この農園が全国に知れ渡ることとなったのである。

ラベンダー、かすみ草、ポピーなど七色の花々が咲き誇る彩りの畑より

 ただ、ちょっと南に下がったところにある彩りの畑のほうが色彩にあふれているので、写真を撮るうえではこちらのほうが個人的には好みかな!