鉄道旅の意義や楽しみを失わせる懸念も
それでも新18きっぷの旅にこだわるなら、3日間もしくは5日間連続利用という条件を考慮しつつ、東海道本線・山陽本線・鹿児島本線・東北本線・中央本線といった運転本数の多い主要幹線を軸にして旅のスケジュールを組むのがベターだろう。
しかし、今回の連続3日間・5日間の利用制限を考慮すると、新18きっぷは旅を楽しむためのアイテムではなくなり、単に列車で移動するだけの退屈なきっぷになったと言える。
車中で駅弁を楽しみたくてもコンビニの台頭で郷土食が豊かな駅弁を販売する店は消え、駅の立ち食いそばもチェーン店ばかりになっている。それも鉄道旅の楽しみを失わせる一因だろう。
2020年から感染拡大したコロナ禍で、鉄道や旅関連産の需要は大幅に減退。ようやく復興の兆しを見せていたが、図らずも新18きっぷへの移行は鉄道旅の意義や楽しみとは何かを再考する機会になった。
【小川 裕夫(おがわ・ひろお)】
フリーランスライター。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経て、フリーランスのライター・カメラマンに転身。各誌で取材・執筆・撮影を担当するほか、「東洋経済オンライン」「デイリー新潮」「NEWSポストセブン」といったネットニュース媒体にも寄稿。また、官邸で実施される内閣総理大臣会見には、史上初のフリーランスカメラマンとして参加。取材テーマは、旧内務省や旧鉄道省、総務省・国土交通省などが所管する地方自治・都市計画・都市開発・鉄道など。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『全国私鉄特急の旅』(平凡社新書)、『封印された東京の謎』(彩図社文庫)、『路面電車の謎』(イースト新書Q)など。共著に『沿線格差』(SB新書)など多数。