結言

 ウクライナは今、ロシア軍の攻勢に耐えられるか否かの重大な状況に直面している。

 寒い冬を前に危機的な状況だ。

 ウクライナの情報総局長キーロ・ブダノフ中将は、2024年の戦況についてウクライナの劣勢と戦力不足という厳しい状況を認めている。

 しかし、ロシアにも問題があると言い、「ロシア軍は今年中にドンバス地域を完全に占領する力はない」と断言している。

 オースチン米国防長官も「モスクワがウクライナで勝利することは決してないだろう」と主張している。

 また、ロンドンを拠点とする英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究によれば、ロシア軍は2024年末にピークを迎え、2025年には弾薬や装甲車の不足にますます苦しむことになるだろうという。

 以上のようなことを勘案すると、今後のウクライナ戦争の状況は以下のようになるであろう。

・ロシア軍の攻撃は継続し、ウクライナ軍は兵力不足のために危機的な状況が継続する可能性が高い。

・ウクライナ軍がロシア軍の攻撃に対して防御を成功させるためには、ロシアが重視しているドンバス地域での防御を重視するのか、クルスクでの作戦を重視するのかを適切に判断しなければいけない。

 その際に、北朝鮮兵がクルスクでの作戦に投入されつつある状況は悪い兆候だ。

・ウクライナの防御成功のためには、米国等の資金と弾薬・兵器の提供が継続し、ウクライナが兵員確保を確実に行い、さらなる要塞を構築することが不可欠である。 

・ウクライナ2024年を持ちこたえることができれば、この戦争におけるロシアの優位性が決定的なものになるわけではない。

 むしろ時間の経過とともにロシアの優位性が低下していく可能性がある。

・ウクライナの運命に影響を及ぼす大きな不確定要素は米国の大統領選挙である。

 現段階では、ドナルド・トランプ氏が勝利するかカマラ・ハリス氏が勝利するかは明確ではない。

 もしもトランプ氏が勝利すると、ウクライナへの支援はなくなる可能性があり、ウクライナの状況はさらに厳しい状況になる。

・北朝鮮軍の参戦はこの戦争の一段のエスカレーションを意味する。

 北朝鮮兵士の参戦が1万人程度であれば、決定的な影響を及ぼすことはないであろうが、それ以上(例えば数万人程度)の参戦であれば、大きな影響を覚悟しなければいけない。

 ウクライナはロシアのみならず、ロシアを支援する北朝鮮、中国、イランと戦う構図になっている。

 ウクライナを支援する米国等のNATO加盟国のウクライナ支援の実行動が問われている。