つまり、ウクライナがクルスク作戦の状況を改善するために、数少ない予備部隊をロシア軍が重視するドンバス地方ではなくクルスク地方に投入した決定に原因がある。
ウクライナはドンバス地方から熟練部隊をクルスク地方に再配置することで、ドンバス地方の陣地を弱体化させているのだ。
現在ドンバスの最前線に展開しているウクライナ部隊の多くは領土防衛隊の部隊だと言われている。
領土防衛隊は主に民間人で構成されており、2022年にロシアの侵略者と戦うために志願したが、正規軍部隊のような訓練や装備は受けていない。
ロシア軍のウクライナ東部での攻勢
ロシア軍は8月以降、ポクロウスク周辺、トレツク、チャシフ・ヤール、ウグレダル方面を重視して攻撃した(図5参照)。
現在、最も激しい戦闘が行われているのはポクロウスク方面で、ロシア軍7万人が攻撃している。
また、チャシウ・ヤールの占領も、ロシアにとって重要な目標であり、これを奪取すると西南部の「要塞」都市(コンスタンチノフカ、ドゥルジュキーウカ)を直接攻撃できるようになる。
最終的にはクラマトルスクとスラビャンスクというドネツク州の重要都市に到達可能となる(図1参照)。
まさに、今後のロシア軍の攻勢にウクライナ軍が防御できるか否かが焦点になっている。
図5:ドネツク東部の状況
ロシア軍は過去1年間、ウクライナの陣地に対して血なまぐさい攻撃を仕掛けたが、その成果は限定的なものにとどまっていた。
しかし、絶え間ない攻撃が今や成果を上げ始めている。2023年を特徴づけた膠着状態が、ロシアの最近の前進の土台を築いたのだ。
前進がいかにわずかであったとしても、ロシアの攻撃はウクライナ軍を徐々に弱体化させ、ウクライナ兵士があまりにも疲弊して一部の陣地を維持できなくなっている。
ロシア軍は人員と砲兵で優位に立っており、ウクライナ軍は以前占拠していた陣地を徐々に失っている。
そして、要塞化された敵陣地を破壊できる強力な航空誘導爆弾の使用増加や、現在戦闘が行われている地域にウクライナの要塞がないことなどがロシアの前進を助けた要因である。