図2で説明したように、ロシア軍は10月、2022年夏以来最大の領土拡大を果たした。そしてロシアは10月末現在、ウクライナの領土の約18%を占領している。
図6:ドネツク東南部の状況
10月の1か月間、ロシア軍は攻撃の主戦場になっているウクライナ東南部ドンバス地方で414平方キロ以上のウクライナ領土を占領した。
ロシア軍は10月初旬に要塞都市ウグレダルを占領した。
それ以降のウクライナ軍の防衛線は貧弱で、ウクライナ軍が塹壕を掘って強固な抵抗を形成できる都市部がほとんどない大部分が開けた地形である。
そのため、ロシアは10月末の1週間だけでウグレダルの北約9.6キロまで進撃した。これは以前の進撃と比べて異例の速さだ。
また、ロシア軍はこの地域のウクライナ軍の防衛拠点となる町セリドベを制圧した。
セリドベはポクロウスクの南側に位置し、そこを占領することによりロシア軍は砲兵を配置し、補給路を確保し、ポクロウスク攻撃の拠点となりうる。
つまり、ウクライナ軍にとって、ドンバス南東部の状況は急速に悪化している。
ロシア軍の問題
攻勢を継続するロシア軍はすべてが順調ではなく、多くの問題を抱えているのも事実だ。
まずロシア軍はウラジーミル・プーチン大統領が命じた目標(ドンバスの完全占領)を達成することができていない。
特に注目すべきは、ウクライナ軍の物流ハブであるポクロウスク市を制圧できていない。
また、ロシアの兵士や物資の不足は悪化している。
特にロシアのレーダー、装甲車両、そして最も重要な兵士の不足は深刻だが、来年にはもっと悪化するだろう。
米国の支援が来年の夏まで強力に続けば、ウクライナはこのロシアの弱点を突くことが可能であろう。
ロシアの戦車等の装甲車両の不足は深刻で、機甲戦力で攻撃ができなくて、小規模な歩兵部隊による攻撃を多用せざるを得ない状況だ。