部下の天分を開花させるには

 稲盛さんが唱えるリーダーの役割の一つに「人を見抜き、育てる。そして天分を開花させる」というものがあります。

 繰り返し説明しているように、稲盛さんは「誰にでも無限の可能性がある」と信じて、全員のやる気が少しでも高まるような経営をしてきました。その結果として社員個々人の天分を開花させ、本人の物心両面の幸福を実現させ、京セラやKDDI、JALを大きく発展させてきたのです。

 このような発想も、稲盛さん自身の経験がベースになって生まれています。

 若いときに多くの不運・挫折を経験し、自分には能力がないことを痛感していた稲盛さんは、松風工業時代に仕事を好きにならざる得ない状況に置かれました。そこで覚悟を決めて仕事に没頭した結果、技術者としての天分を開花させることができたのです。

 京セラ創業後は、11名の高卒採用者の反乱に遭ったことが契機となり、経営者としての天分も開花させることもできました。そのような経験を通じて、誰にも無限の可能性があるのだから、その天分を花開かせるのがリーダーの役割だと稲盛さんは信じているのです。

 もし経営者が「自分の会社には才能ある社員はいない。社員のレベルは他社と比べると劣っている」と思えば、成長できるはずはありません。

 そうではなく「こんなちっぽけな会社に、なんと素晴らしい社員に集まってもらったのだろう。この社員たちをどうしても幸せにしてあげたい」「誰にでも無限の可能性があるのだから、才能はどこかに隠れているはずだ。それを開花させれば、大きく成長できるし、全従業員の幸福は実現できる」と思えば、結果は全く違ってくるでしょう。

 そのために必要なのが、「人を見抜き、育て、そして天分を開花させる」という考え方なのです。