「虎に翼」でも言及され賛否両論
関東大震災朝鮮人虐殺事件については、日本国内には様々な意見がある。NHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」でも、大震災後に「朝鮮人が暴動を起こしたという流言が飛び交って、大勢の罪のない朝鮮人が殺された」と語られ、SNSで賛否両論のコメントが続出したばかりだ。
昨年8月30日にはNHKのクローズアップ現代で放映された「集団の“狂気”なぜ ~関東大震災100年“虐殺”の教訓~」では、植民地化反対を訴える朝鮮人を「暴徒」として捉えていた日本社会の集団心理がデマを広める要因になったのではという専門家の分析を紹介している。朝日新聞は今年8月30日、自治体の公的記録のなかに虐殺事件をめぐる記述が相次いで発掘されていると報じている。
しかしその一方で、否定論もいまだ根強い。昨年8月、松野博一官房長官(当時)は、「政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することの出来る記録が見当たらない」と発言した。また、東京都の小池百合子知事は今年8月の定例記者会見で、関東大震災で朝鮮人が虐殺されたのを認めるかと問われ、「それぞれが研究されている」と述べ、立場を明らかにしていない。
対日強硬派とされる李代表は、日韓関係強化には過去の清算が前提となると考えているようだ。そうした考えは韓国社会ではおおむね支持を得ており、朝鮮人虐殺に関して今後、デモなどを通じて日本政府に真相究明を強く要求する可能性もある。
それにしても腑に落ちないのは、なぜいま、こうした写真展が開かれたのか、である。もちろん、映画が韓国で8月に公開された、ということはあるだろうが、公開と同時に開催されても良さそうなものだ。そもそも、こうしたイベントは通常であれば、関東大震災が発生した9月1日に合わせて、8月や9月に開催されるものだろう。しかも、今年は虐殺から101年目であり節目の年でもない。
恐らくはいくつかの理由があるのだろうが、その一つとして考えられるのが2026年に実施される見込みの大統領選挙である。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が任期を満了するなら、大統領選まで2年半を切っている。朝鮮人虐殺真相究明への要求は、韓国ではまだそれほど盛り上がりを見せておらず、李代表は対日政策の一つとしてこの問題に目をつけたとも考えられる。