- 世界遺産に登録された佐渡島の金山をめぐり、韓国内で批判が巻き起こっている。
- 「強制労働」の文言が使われなかったことに野党やメディアが噛み付いた。
- 世界遺産登録が反日批判の火種になった「軍艦島」の二の舞いになる懸念もあり、日本は今後も慎重な対応が必要だ。
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
佐渡島の金山が7月27日、ユネスコ世界遺産に登録された。2022年2月1日に世界遺産への推薦が閣議決定されてから、2年半の歳月を要した。その足取りには紆余曲折があった。
閣議決定された当時の日韓関係は最悪とされており、韓国政府は日本政府の方針をことごとく糾弾していた。閣議決定を聞いた文在寅大統領(当時)は、朝鮮半島出身者の「強制労働被害の現場」であることを理由に「直ちに撤回すべき」と即座に主張し、「ユネスコなど国際社会とともに断固として対応する」と息巻いた。
その後、韓国では政権交代により日韓関係が大幅に改善したとはいえ、歴史認識問題はいまでも両国間の足かせになっている。その韓国に、佐渡金山の世界遺産登録を今後、どう納得してもらえるかが課題となった。
世界遺産に登録されるためには、世界遺産委員会で21の委員国のうち3分の2以上の賛成が必要とされているが、全会一致が慣例になっている。したがって、委員に名を連ねている韓国の賛成は絶対に必要であった。
世界遺産委員会前の6月に行われた事前審査では、登録内定とならず、「情報紹介」が勧告され、そのなかで、「鉱業採掘がおこなわれたすべての時期を通じた資産に関する歴史の説明や展示戦略の策定」が求められていた。事実上、韓国への配慮が登録の条件となり、登録可否の決定は、インドのニューデリーで7月21日から11日間にわたり開催された世界遺産委員会に持ち越されたのである。