ウクライナ戦争勃発以降、グローバルサウスが流行語のようになった。G7はロシアの侵略行為を批判し、ロシア、中国、北朝鮮などは、アメリカの一極支配を非難する。

 この両者の間で曖昧な態度を取っている発展途上国や新興国をグローバルサウスと呼ぶようになったのである。ロシアに厳しい制裁を科すことに反対の国々が「南」には多いからである。

 今年のBRICSの議長国はロシアであり、ウクライナ戦争をめぐっても加盟国の思惑が異なり、親露路線を鮮明にしているイラン以外は、いずれも立ち位置を曖昧にしている。

 ウクライナ戦争やガザでのイスラエルとハマスの戦闘を終わらせるために、グローバルサウスの国々が大きな役割を果たすことを期待したい。

国際秩序を変える

 拡大によってBRICSは深刻な内部対立をかかえることになる可能性があるが、BRICSが、アメリカの一極支配、パックス・アメリカーナを揺るがす存在としての重みを増していくことは確かである。

10月24日、BRICSの首脳会議で演説するプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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 欧米という「北」の先進国による支配に対して、BRICSに集う「南」の国々が増え、グローバルサウスとして発言力を強化することは、多くの発展途上国の共感を呼ぶ。

 また、中東の石油産油国が加盟することで、資源エネルギーの観点からもBRICSの重みは増す。ロシア、UAE、イランが共同で、石油戦略を発動すれば、世界は大きな影響を受ける。

 さらに、これまでは南アフリカのみが加盟していたアフリカにおいて、ともに人口が1億人を超えるエジプトとエチオピアという2つの大国が新たに加盟することは、アフリカに対するBRICSの関与も深めることになる。

 エジプトはスエズ運河を管理しており、世界の物流の大動脈を支配している。世界の貿易の12%がスエズ運河経由である。また、エチオピアは東部アフリカの戦略的に重要な位置にあり、首都アジスアベバにはアフリカ連合(AU)の本部がある。

 拡大BRICSの今後の国際秩序を大きく変えそうである。