イランがホルムズ海峡を封鎖するリスクがくすぶる(写真:Hamara/Shutterstock.com)

中東情勢をめぐり、原油供給が減少する懸念がくすぶっている。イランに対するイスラエルの報復はいまだ実行されておらず、石油施設への攻撃も回避されるとの見方が一時、広がったが、その可能性がゼロになったわけではない。イランは報復攻撃への備えを着々と進めており、日本はホルムズ海峡封鎖という最悪の事態への準備が必要だ。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=69ドルから72ドルのレンジ圏で推移している。「中東情勢の悪化により原油供給が減少する」との警戒感が残っており、原油価格は先週に比べて強含んでいる。

 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

 10月21日にシンガポールで開催された国際エネルギー・ウィーク会議に出席した国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、ロイターの取材に対し、「中国の原油需要の伸びは来年も低迷する」と予測した。

 ビロル氏はその理由として、中国政府が実行しようとしている景気刺激策が限定的であることを挙げている。ビロル氏はさらに「石油化学製品がなければ、中国の今年の原油需要は横ばいだった」と指摘している。

 他方、ビロル氏と同じ会議に出席したサウジアラビア国営石油企業サウジアラムコのナセルCEOは、中国の原油需要について強気の見方を示した。

 中国では電気自動車(EV)や太陽光発電への移行が進んでいるが、ナセル氏は化学分野向けの需要が順調に伸びていることを強気の根拠としている。ナセル氏はさらに「新興国・途上国『グローバルサウス』での需要が長期的に大きく伸びることから、世界の2050年時点の原油需要は日量1億バレル以上になる」との予測を示した。

 ビロル氏とナセル氏の主張の違いは中国の原油需要の見通しに起因する。