中国の原油需要は長期にわたり減り続ける
IEAは「世界規模でEVが普及することにより、世界の2030年の原油需要は日量600万バレル減少する」と試算している。ナセル氏のような原油需要の強気派は「輸送部門に代わってプラスチックなど石油化学製品の需要が大幅に伸びる」と主張しているが、はたしてそうだろうか。
中国の第3四半期の国内総生産(GDP)は前年比4.6%増となり、第2四半期(4.7%増)から減速した。2023年第1四半期以来の低い伸びだった。
これまで住宅建設や公共事業など投資部門が中国の経済成長を牽引してきたが、投資効率が格段に下がり、地方政府の財政赤字は今や天文学な数字となっている。経済構造の大転換を余儀なくされている状況下で、中国人民銀行(中央銀行)の金融緩和程度で中国経済が回復に向かうわけがない。プラスチックなどは主に住宅や公共事業向けであることから、バブル崩壊の中国で今後、石油化学製品の需要が大幅に伸びることはないだろう。
中国の9月の原油需要は前年比5.4%減の日量1434万バレルだった。6カ月連続で前年割れとなっており、1~9月ベースでも前年比1.6%の減少だ。
足元の状況は、弱気派のビロル氏の指摘以上に悪いと言わざるを得ない。
筆者は「バブル崩壊後の日本の原油需要が30年間で半減したように、中国の原油需要は長期にわたって減り続ける可能性が高い」と考えている。
供給サイドに視点を転じれば、米国の存在感は高まるばかりだ。