小池都知事が新たな公約として掲げる「ホームドアの設置促進」

 そうした政府・東京都の姿勢もさることながら、東京メトロ株を売却することで得るキャピタルゲインが今後どのように使われるのかも気になるところだろう。

 国の売却益は、東日本大震災の復旧・復興のために発行した復興債の償還に充てることが法律で定められている。そのため、国の売却益は議論の余地が少ない。

 他方、東京都の売却益は約1600億円が想定されており、その使途は都民の生活向上に資するインフラ整備に充てる方針となっている。

 都民生活の生活向上に資するインフラ整備という表現は漠然としているが、具体的にどんなインフラが整備される予定なのか。東京都は東京メトロ株の売却益を歳入として計上していないため、現時点で使途は判然としない。

 ただ、小池百合子都知事は2016年の都知事選出馬時に「7つのゼロ」を掲げたが、この公約には都道の無電柱化といったインフラ整備が盛り込まれている。この公約は先の都知事選で全く進んでいないと批判を浴びただけに、無電柱化を加速させるための財源として活用する可能性はあるだろう。

 また、2024年の都知事選で小池都知事は新たな公約として鉄道事故を防ぐためにホームドアの設置促進を訴えていた。ホームドアの整備促進は選挙のためのポーズではなく、選挙後の8月23日には「ホームドア整備を加速する官民一体の協議会(第1回)」が開かれている。

今年3選を決めた小池百合子都知事はホームドアの整備を新たな公約として掲げた今年3選を決めた小池百合子都知事はホームドアの整備を新たな公約として掲げた(2024年6月、筆者撮影)

 同協議会では東京都やJR・私鉄関係者のみならず国土交通省からも担当者がオブザーバー参加し、小池都知事は「ホームドアの整備を官民一体で知恵を出し合い、乗り越える課題」と発言している。

 ホームドアが利用者の命や身体を守る設備であることは衆目一致しているが、それ以外にも整備したことで得られる効果はある。例えば、人身事故を減少させることで列車の定時性確保にもつながる。鉄道利用者にとって時間が読める公共交通は、信頼性を得る要因にもなる。