ネタニヤフ政権内の極右勢力、ガザへのさらなる軍事圧力を主張
それどころか、ネタニヤフ政権内の極右勢力は17日、シンワル氏殺害の報を受け、IDFに対しガザ地区への軍事的圧力を強めるよう要求している。スモトリッチ財務相はXで「ガザ地区での激しい軍事的圧力を強化せねばならない」とし、ベングビール国家治安相も「完全勝利まで全力でつづけなければ!」と投稿している*2。
*2:Smotrich, Ben Gvir call for IDF not to take foot off the gas after Sinwar’s killing(THE TIMES OF ISRAEL)
その上、あろうことかこの閣僚2人は21日、ガザ地区での戦闘終結を見越して同地域にユダヤ人の入植を求める集会に参加している。ネタニヤフ氏自身はこれまで、ガザへの入植を否定してきた*3。
*3:ガザ再入植求め集会 極右閣僚「正しい解決策」(47 NEWS)
ネタニヤフ政権のやり口はさしずめ、ある地域で強盗殺人事件が発生したので「犯人逮捕のため」と称し、強盗犯とは全く無関係の地域住民をすべて巻き添えにしているようなものだ。そこに暮らしてきた乳幼児や女性、高齢者までを含む人たちまで犠牲にして街ごと破壊し尽くした上で、そこに新たに自分たちの居を構えようという滅茶苦茶なやりようではないだろうか。現イスラエル政権が、国際刑事裁判所(ICC)を始めとする国際世論から戦争犯罪者と見なされていることに、何らの誤りはないと言える。
これ以上の戦闘を望まないのは、多数のイスラエル市民も同じことだ。イスラエル軍がガザ地区に攻撃を加えた19日夜、イスラエル最大の商業都市テルアビブなどで、数千人規模の抗議活動が起きた。現地報道によれば、ハマスに人質に取られた人たちの家族などが参加し、「(シンワル氏殺害により)復讐は果たした」「人質解放を!」などと訴えた。
息子を人質に取られている母親は、シンワル氏が殺害された今、これ以上ガザで何を達成するのかと政権を批判した。別の母親は「(政権による)言い訳は終わりだ」とも述べている*4。
*4:‘You got your revenge!’: Protesters demand government leverage Sinwar death for deal(THE TIMES OF ISRAEL)
人質の家族が危機感を感じるのは、ネタニヤフ政権が人質解放に向けた交渉を進展させず、ガザへの攻撃を続ける上に最高指導者を殺害したことで、人質の生命に危険が及ぶことを恐れてもいるからだ。ハマス幹部は18日、イスラエルのガザ侵攻が終結し、同地から撤退するまで人質解放はないとした。
8月末には、ガザ南部でイスラエル側の人質6人の遺体が確認された。昨秋、音楽フェスティバルで拉致された23歳の男性は、襲撃当日手榴弾による攻撃で左手を失い、そのまま人質に取られた。遺体を確認した母親によれば、男性は至近距離で銃殺される直前まで、残った右手で身を守ろうとした痕跡があるとした。身長180センチだった男性の体重は、遺体となって発見された際、52キロしかなかったという。
いまだハマスに捕らえられている人質の家族がその解放を一刻も早く求め、焦燥感を強めるのは、当然のことだろう。そんな自国民の悲痛な訴えにも強硬姿勢を崩さないネタニヤフ政権は、さながら「殺戮の中毒症状」に陥っているといった指摘もある。
自国民の安全よりも、パレスチナ市民の大量殺戮を優先し、それを「やめられない」ネタニヤフ政権の事情とは、一体何か。