【注目選挙区 和歌山2区】

 衆院の定数是正を図るため、今回の選挙では全国で区割りの変更や都道府県ごとに定数の増減が行われています。定数3だった和歌山県は定数が2となり、旧2区の一部と旧3区が統合され、新しい和歌山2区となりました。和歌山県の約9割を占める広大な選挙区です。

 旧3区は自民幹事長を長く務めた二階俊博氏の地盤です。二階氏は派閥「二階派(志帥会)」を率い、中央政界だけでなく、和歌山の政界にも君臨していました。その「二階王国」に異変が起きるかもしれません。

 二階派も裏金問題に関わっていたことから、二階氏は不出馬を表明し、政界を引退することに。そして、後継として3男の二階伸康氏(46)を擁立したのです。そのままだったら、大物議員の世襲がすんなり実現していたかもしれません。しかし、かねてから「首相を目指す」として衆院への鞍替えを狙っていた参議院議員の世耕弘成氏が、公示直前の10月初旬、和歌山2区での立候補を表明したことから、注目選挙区となりました。

“安倍派5人衆”の1人として知られる世耕氏は、経済産業大臣や参院幹事長などを歴任した実力者です。一方、派閥主催の政治資金パーティーの収入、1542万円を政治資金収支報告書に記載せず、裏金にしていたとして最も重い離党勧告処分を受け、2024年4月に自民党を離党していました。

 つまり、和歌山2区は「大物議員の世襲」VS「離党勧告を受けた裏金議員」という構図になったのです。

 この選挙区では、ほかに共産党の楠本文郎氏(70)、立憲民主党の新古祐子氏(52)、諸派の高橋秀彰氏(42)が立候補しています。

 国民の審判が下るまで、あと数日。今回の選挙を通じて、政治とカネの関係は改善されるのでしょうか。「裏金議員」の当落だけでなく、選挙全体の結果から目が離せません。

フロントラインプレス
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