伊周の死後に「眼病」を患い転機を迎えた弟の隆家

 一方、伊周の弟・隆家はどうだったかというと、ドラマでは「あの世で……栄華をお極めなさいませ……」と声を振り絞って、伊周を見送っている。

 伊周は臨終にあたり、息子にしたように、弟に対して何かを言い残すことはなかった。弟は勝手に自分の道を歩むと思ったからだろう。

 その予想通りに、伊周の死後、ドラマでの隆家は道長に「この先は、敦康様の後見を私がお勤め申し上げたいと存じます」と申し出ている。道長がしばし逡巡していると、こうアピールした。

「私は兄とは違います。敦康様の後見となりましても、左大臣様にお仕えしたいと願っております」

 実際の隆家は、この後予期せぬ眼病に悩まされる。角膜の突き傷から細菌に感染し、化膿してしまったらしい。相談した藤原実資(さねすけ)から「九州の大宰府に宋の名医がいる」と聞くと、大宰権帥への任官を望み、大宰府行きが実現する。

 ところが、養生するつもりで渡った大宰府にて、のちに「刀伊(とい)の入寇(にゅうこう)」と呼ばれる異賊の侵攻を受けることになるのだから、人生は予想がつかない。

 ドラマでどこまで描かれるかは分からないが、「さがな者」(荒くれ者)と呼ばれた隆家の活躍に引き続き期待したい。