コンビニ事業に集中する再編案を公表したセブン&アイ・ホールディングスコンビニ事業に集中する再編案を発表したセブン&アイ・ホールディングス(写真:共同通信社)

即座に拒否できなかった「ACTからの買収提案」

 セブン&アイ・ホールディングスが大揺れに揺れている。

 10月10日には、イトーヨーカ堂などスーパー部門を束ねる中間持ち株会社を設立し、外部資本を入れて本体から切り離すこと。その上でセブン&アイの社名を「セブン-イレブン・コーポレーション(仮)」に変更することが明らかになった。つまり業務領域も社名も、コンビニ事業への集中を明確にしたのだ。

 セブン&アイの改革案は、カナダに本拠地を置き、北米その他でコンビニ事業を展開するアリマンタシォン・クシュタール社(ACT)からの買収提案への対抗策だ。

 ACTのセブン&アイに対する買収提案が明らかになったのは8月のこと。買収価格は約6兆円で、これは当時の株価に3割近いプレミアムを乗せたものだった。

 この提案に対してセブン&アイ側は特別委員会を開いて対応を協議した。経営陣の本音としては、即座に提案拒否をしたいところだったが、昨年、経済産業省が「企業買収における行動指針」を発表。その中で買収対象企業側は真摯な買収提案には真摯に検討するよう求めていた。そして被買収提案企業には、社外取締役や外部識者による諮問機関である特別委員会を開くことを推奨している。

 セブン&アイの特別委は、9月6日、ACTに書簡を送り、買収提案に反対する意志表明を行った。その内容は、「セブンが取り組んでいる株主価値向上について、『著しく過小評価している』と判断した」。つまり買収価格が安すぎるという理由で反対する、というものだった。

 実は買収提案が明らかになった時点でのプレミアムは3割だったが、その後、セブン&アイの株価は上昇し、9月上旬の株価ではプレミアムがほぼなくなっていた。

 ACTはこれに対し、買収価格を7兆円に引き上げ再提案したため、セブン&アイの井阪隆一社長は、「提案は、企業価値を上げるためであれば真摯に対応する」と答えざるを得なかった。その上で発表したのが冒頭の改革案だった。

セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長(写真:共同通信社)