10月利下げであれば、ユーロ相場下押しに

 かかる状況下、上述のビルロワドガロー総裁発言を持ち出すまでもなく、10月17日会合では追加利下げの公算が大きい。

 次回会合(12月12日)までに2度のHICPがあり、しかも米大統領選挙まである。もちろん、PMIを筆頭とする景況感の発表もあるし、7~9月期GDPの数字も明らかになっている。

 これらすべてが域内景気にアゲインストな材料であった場合、10月17日会合で利上げを見送ることの「ツケ」は非常に大きく、12月会合では▲50bpという可能性も浮上するだろう。

【図表⑥】

ユーロ圏実質GDP
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 常々、一定のペースでの利下げを好んできたラガルドECB総裁にとって望まぬ展開である。10月、12月と▲25bpずつの利下げを割り当てるのが賢明だろう。

 片や、周知の通り、米連邦準備理事会(FRB)については11月利下げスキップという説まで浮上しており、欧米経済についての彼我の差は非常に大きい。

 ドル/円相場と同じか、それ以上に金利差へ追随する傾向のあるユーロ/ドル相場は下押しされる可能性がにわかに強まっているように見受けられる。

※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2024年10月9日時点の分析です

唐鎌大輔(からかま・だいすけ)
みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(2022年、日経BP 日本経済新聞出版)。