河井克行が考えるこれからの人生

──「これから僕はどうやって生きていくのだろうか。やりたいことは山ほどある」と書かれています。現在どのような生活をし、今後どのようなことをしていきたいとお考えですか?

河井:アップルの創業者、スティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学の卒業式で語った有名な祝辞があります。「Connecting the dots (点と点をつなげる)」です。これは、人生の中の一見関係のない点と点、つまり出来事と出来事がいつかは結び合って人生を彩っていくというお話です。この祝辞は、ネットで今でも見ることができます。

 私はこの話が好きで、現役時代、地元の高等学校の卒業式などに呼ばれては、引用していました。今本当に、スティーブ・ジョブズの言っていた通りだなあと感じる日々です。こういう状況にもかかわらず、多くの方々から応援していただいたり、手を差し伸べていただいたりしています。

 安倍政権時代に、安倍総理が外交担当の総理大臣補佐官という役職を私のために初めて作ってくださいました。総理の特命により様々な国や地域に行かせてもらいました。

 たとえば、フィリピンのドゥテルテ前大統領にはずいぶん親しくしていただき、今でも側近の方々を含めてお付き合いがあります。出所するなり「早くおいで」と言ってくださいました。会った瞬間、「My friend, my friend」と固く手を握り締めていただきました。今年は既に4回フィリピンを訪問しています。

首相補佐官の時はスティーブン・バノン氏にも会っていた(写真:共同通信社)首相補佐官の時はスティーブン・バノン氏にも会っていた(写真:共同通信社)

 今、いくつかの企業の顧問をしていますが、海外でのビジネス展開に私の人脈や知見・経験を活かすことができればと思っています。7月にはバチカンに行きました。今回で7回目の訪問でした。

 そして、つい先だっては、ブータン王国に行ってきました。あの国を訪れるのはこれで6回目です。訪問の度に、第四代国王陛下に謁見を賜り、今回も、本当にありがたいことですが2時間も、お時間を割いていただきました。王妃陛下が最初から最後までずっと側にいてくださいました。

「受刑は長らく大変でしたね」「政治をやっていると、他の勢力が妨害したりして、自分のコントロールが及ばない、いろんなことが発生しますよ」とお慰めいただきました。通り一遍の言葉ではなく、本当に温かく響きましてね、思わず涙が出ましたが、王妃陛下が私の隣からそっとティッシュを差し出してくださって。また胸が熱くなりました。

「ブータンの発展にぜひ協力してほしい」と言われました。今までの私の人脈や経験が結びついていく予感がしています。スティーブ・ジョブズの言ったことは間違いありません。これは私に限らず誰でも、過去の出来事や人間関係が結びついて、必ず点と点は結びついて線になります。

 いろいろな経験をした私だからこそ言います。特に若い人たちに言いたい。絶望しちゃいけない。諦めちゃいけない。大丈夫です。生きていればぜったいに大丈夫だよと。

※前編「逮捕・実刑判決をくらった元法務大臣は、なぜ塀の中から獄中日記を書き続けたのか?」から読む

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。