今年2月8日、広域強盗団の主犯格としてフィリピンから日本に移送される直前の渡辺優樹容疑者(左)と小島智信容疑者(提供:Bureau of Immigration/AP/アフロ)

(廣末登・ノンフィクション作家)

 首都圏を中心に全国各地で発生した広域連続強盗(以下、ルフィ事件)以降も闇バイトや強盗が絶えない。銀座の高級腕時計店に押し入り腕時計72点などを奪った強盗犯4人は、高校生を含む10代の少年であった。

 警察の奮闘により、闇バイトの実行犯の多くは逮捕されているものの、一般的に闇バイトは、首魁の逮捕までは障壁が多い。警察庁によると、検挙人員のうち、犯行グループの中枢にいる主犯被疑者(グループリーダー及び首謀者等)を指す「中枢被疑者」は41人(前年比-2人)で、総検挙人員の1.7%に過ぎない(警察庁組織犯罪対策第二課「令和4年における特殊詐欺の認知・検挙状況について暫定値版」)。

 闇バイト応募者など末端の実行犯は逮捕されているが、主犯の逮捕は難しく、彼らは、次から次へと新たに闇バイトを雇って犯行を続ける。

 そうであれば、我々は被害に遭わないよう、特殊詐欺や強盗のカラクリや実態を正しく知り、ニュースなどを見ない青少年に注意を促し続けること、そして我々自身が常日頃から注意しターゲット化されないことが大切である(本稿は、祥伝社新書から7月3日に発売される拙著『闇バイト――凶悪化する若者のリアル』の内容を一部抜粋・再構成した記事である)。

詐欺や強盗等の実行に欠かせない「闇名簿」の売買実態

 特殊詐欺やアポ電強盗、強盗をする上で、重要な役割を果たすツールが「闇名簿」である。この名簿は、様々な種類があり、ランク付けされているという。以下、筆者が、闇名簿などの流通に詳しい元暴力団から取材した話を紹介する。

<ルフィ事件のターゲットは、名簿からチョイスしたと思います。ただ、現時点では、この名簿の質はわからないし、入手先も分からない。もしかしたら、ダークウエブで購入(後述)したものかもしれない。

 闇名簿はピンキリで、サラピン(一度も犯罪に使われていない)は値が張ります。詳細な名簿なら一件あたり1万円する場合もある。一方、使い古された名簿(出涸らし)は、一件300円、500円と安くなる。おそらく、首都圏を中心に全国各地で発生した広域連続強盗事件で使われた名簿は、金を持っている、入ったら金がありそうな家の名簿を使ったと思います。

(裏社会の)名簿屋は、情報屋から情報を買います。情報屋はカタギから情報を買うんです。デイサービスや家政婦派遣の情報、学校職員の家族名簿、市会議員や村会議員の名簿と、いろいろあります>

1月22日、東京・狛江市の強盗殺人事件の現場となった住宅周辺に集まった捜査員ら(共同通信社)