新首相の指名

 国民議会の選挙後の7月16日に、アタル首相は、マクロン大統領に辞表を提出したが、後任首相の選定は困難を極めた。

 しかも、三つの会派の政策は「水と油」と言ってもよく、誰を首相にするかで話がまとまるはずはなかった。

 極右のRNは移民排斥を主張しており、「自由、平等、博愛」というフランス共和国の理念に反している。そのため、左翼連合も中道右派の与党連合もRNを拒否する。

 左翼連合は、「不服従のフランス(LFI)」、社会党、共産党、環境政党から成るが、その中で最大勢力を持っているのが、ジャンリュック・メランションに率いられるLFIである。メランションは、これまでマクロン政権を厳しく批判し、年金受給年齢の引き上げなどの財政健全化に反対してきた。マクロンにとっては政敵である。

 そこで、マクロンはパリ五輪の開催を理由に、しばらく政治休戦したのである。

 憲法8条の第1項で「大統領は首相を任命する。大統領は首相による政府の辞表提出に基づきその職を免ずる」、第2項で「大統領は、首相の提案に基づき、他の閣僚を任命し、また、その職を免ずる」と定めている。

 マクロンは、首相候補として20人以上に当たり、やっと9月5日にミシェル・バルニエを首相に任命した。それまでは、アタル首相が暫定首相として職務を行ってきた。