米欧は勝利の意味をまともに考えてこなかった

 米欧は勝利とは何を意味するのかをまともに考えてこなかった。侵略者ロシアをウクライナから追い出すことか。新たな国境を設定して安全を保障することか。ロシア軍に壊滅的な被害を与え、新たな脅威をもたらすことができないようにすることか。答えをウクライナに委ねてきた。

 北大西洋条約機構(NATO)加盟国は「ウクライナの未来はNATOにある」と繰り返しても、ウクライナの即時加盟に熱心な国はほとんどない。しかし「ウクライナが独自の核戦力を必要と判断する事態を避けるため、ウクライナをNATOに招待せざるを得なくなる可能性がある」(同)。

 ロシアの核ドクトリンはこれまで「外国軍の通常兵器使用を含めロシアの存立が脅かされたり、核攻撃を受けたりした場合、ロシアは大量の核兵器を使用できる」と定めてきた。核抑止力の運用に不可欠な施設への攻撃も核兵器使用の対象とされてきた。

 英紙タイムズは「ロシアは核兵器を使うのか」と題した9月25日付記事で「プーチンはウクライナ軍のクルスク州侵攻をロシアや自らの体制に対する現実的な脅威とは考えていないものの、クレムリンの強硬派はプーチンに核ミサイル使用の敷居を下げるよう促している」と解説する。