核兵器に関する誇張表現は日常茶飯事

「西側にとって最も難しい問題はプーチンの考えを推測すること、推測を裏付けることだろう。核兵器に関する誇張表現は近年ロシアでは日常茶飯事となっており、核兵器使用の心理的敷居を下げる恐れがある。プーチンの精神状態に対する懸念もある」(タイムズ紙)

 戦術核兵器は射程距離と威力が限定的で、戦争終結やプーチンの即時勝利を保証しない。都市全体を破壊する戦略核兵器を使用すれば、米欧の大規模な反撃を招く。タイムズ紙は「西側の観点からするとロシアの核兵器使用はほとんど意味をなさない」と結論づける。

 バイデン政権はウクライナ戦争の拡大と核戦争の可能性を恐れている。しかし核兵器使用の威嚇も何度も使えば、オオカミ少年と同じで効果が薄れてくる。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。