記者会見に臨むラピダスの小池淳義社長写真提供:共同通信社
2025年6月、技術的に困難とされる「2ナノ級」の微細回路の試作に成功したと発表したラピダス。だが、技術・人材・資金という“三重苦”が量産への道を阻む。経済安全保障の観点から国も先端半導体の国内生産を後押しするが、商用化の見通しは依然不透明だ。
日本経済新聞の専門記者が、2026年のビジネスで押さえておきたいポイントを予測する『これからの日本の論点2026 日経大予測』(日本経済新聞社編/日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋・再編集。米ブロードコム、台湾メディアテックが切り開いた「カスタムAI半導体」という新市場などに、日本復活のヒントを探る。
始動したラピダスを待つ難関
『これからの日本の論点2026 日経大予測』(日経BP 日本経済新聞出版)
2025年6月、ラピダスはウエハー上に回路線幅2ナノ級の先端微細回路を形成して動作を確認する試作に成功したと発表した。
同社は22年8月に設立。23年9月に千歳市で工場を着工し、25年3月末に装置の設置までを完了した。4月初頭から試運転を始め、6月に試作用ウエハーを製造ラインに流し始めた。
試運転から3カ月余りで2ナノ級の微細回路の動作が確認できた。「(3カ月での試作成功は)本当に画期的なことです」と、千歳市内でお披露目記者会見に臨んだ小池淳義社長は感慨深そうに自画自賛した。
だが、あくまでこれは第一歩だ。この先には長く険しい道のりが待っている。
まず、試作と量産は全く別物と、専門家は口をそろえる。
現在、2ナノ級で採算が取れる商用量産にメドを付けているのは世界でTSMCのみとみられる。同社は6月までに量産試作で90%以上の歩留まり(良品率)を達成したと報じられており、秋に商用量産を始める計画だ。
これに対しサムスンの2ナノ製造ラインでは同じ6月時点で5割程度の歩留まりにとどまっていたようだ。同社もやはり25年秋の商用量産開始を目指すが、この程度の歩留まりでは当面、採算が苦しそうだ。微細化の先端技術をTSMCと長年競ってきたサムスンでさえ苦労するほど、2ナノの量産は技術的に難しいのだ。







