「18人が死亡」という懸念の声をどう考える?

 続いて、日本での承認審査に使われた承認審査報告書についても見る。

 ネットの指摘では、この審査報告書の追加データにおいても死亡が報告されていると問題視されている。例えば、ネットでは「18人が死亡した」と批判する意見が確認できる。

 これはどういうことだろうか。

 報告書では、臨床試験の論文に掲載された92日目よりも後の210日目までの情報が掲載されている。92日目よりも後はレプリコン・ワクチンとプラセボの入れ替えが行われ、その影響が評価されている。

 具体的には、92日目までにレプリコン・ワクチンの接種を受けていた人は一転、プラセボの接種を受け、逆にプラセボの接種を受けていた人はレプリコン・ワクチンの接種を受けるという入れ替えが行われた。医薬品の効果が一方のグループに偏らないように入れ替えが行われるのは、医薬品の試験ではよく行われることだ。

 こうして2つのグループが観察された結果、レプリコン・ワクチン―プラセボの順番で接種を受けたグループでは9人が、プラセボ―レプリコン・ワクチンの順番で接種を受けたグループでは4人が死亡した。

 ネット上では、92日以降に両方の群を合わせて合計13人が亡くなったのではないかという指摘が見られる。92日目までにレプリコン・ワクチンの接種を受けた群で亡くなった5人も加えて、合計18人が亡くなったというものだ。

 こちらについても、両方の群が約7500人存在し、それらの中で4カ月ほどの期間で亡くなった人は全体の0.1%に過ぎない。心筋梗塞や脳血管発作といった心血管関連の死因があったが、1万5000人中2人であり、その頻度は極めて低い。ワクチンが原因と断定するのは無理があるように見える。

 石井氏は審査報告書の死亡については、「これらがワクチンが原因になったと懸念することは論理に飛躍があるのではないかと考えます」と説明する。

※レプリコン・ワクチン―プラセボ群9/7458例(0.1%、事故死、他の特定できない死亡が各2例、急性心筋梗塞、敗血症性ショック、外傷、口唇がん/口腔がん、悪性肺新生物が各1例)、プラセボ―レプリコン・ワクチン群4/7349例(0.1%、コロナ感染が2例、頭蓋脳損傷、脳血管発作が各1例)