野崎氏は自分の会社の従業員たちが寝室に足を入れることを嫌っていた。入れば泥棒呼ばわりされるので従業員たちも足を運ばなかったという。

 ただ信頼が厚かった大下さんだけは、掃除のために野崎氏が出勤した後の寝室掃除を任されていた。また前出・吉田氏も野崎氏が在宅のとき、寝室の壁に飾っているルノワールや藤田嗣治の絵画を眺めたり、室内で野崎氏や生前の愛犬イブの写真を撮ったりしていたという。

自宅寝室で撮影された野崎幸助さんと愛犬イブ(撮影:吉田 隆)
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「大下さんに3000万円をあげろと生前の社長から言われていました」

 早貴被告と家政婦の大下さんは、当初それほど仲が良くなかったが、ある時から急速に接近した。それについて吉田氏はこう語る。

「5月24日に亡くなったドン・ファンの遺体がまだ解剖から返ってこなかった26日のことです。私と大下さん、そして早貴被告の3人でドン・ファン宅のリビングで雑談をしていました。

 そのとき、ドン・ファンが生前、たびたび大下さんに『自分が死んだどきには大下さんに遺産として1000万円あげる』と言っていたことが話題になりました。その話はアプリコの番頭格“マコやん”も金庫番のSさんもたびたび聞いていたことで、誰も驚くような話題ではありませんでした。

 ところがそのとき早貴被告が突然、『実は私、社長から〈ワシが亡くなったら大下さんに3000万円を渡してくれ〉と言われていたんです』と言い出したんです。この時ばかりは大下さんも『え、本当?』と驚いていました。

 なぜ早貴被告が突然そんなことを言い出したのか分かりませんが、私はもしかしたら、早貴被告が大下さんをうまく丸め込んで余計なことを言わせないようにするためだったのではないかと疑っています」

 つまり吉田氏は、早貴被告には大下さんに証言されたら困る“何か”があったから、大下さんにすり寄り、3000万円のエサをぶら下げたのではないかと疑っているのだという。